歴史と見どころ
旧柏倉家住宅は、山形盆地の西部、山形県東村山郡中山町岡地区に所在しています。近世の上層農家の形式を継承した大規模住宅です。
近代の発展を語る、主屋の座敷や銘木による精緻な内装。
漆塗りや金箔で荘厳な仏間、春慶塗で華やかに彩る前蔵の上質な蔵座敷。
山形県村山地方における屋敷構えを特徴とした、「明治期の南東北地方における上質な農家建築」 として高く評価されています。
九左衛門家の歴史
当主は代々「九左衛門」と名乗り、10家以上の分家を創設しました。村山地方を代表する農家・地主である一方で稲作や青苧のほか紅花の自作農も手掛け、江戸時代後期には同地方において最多量級の紅花生産者でもありました。明治時代以降は銀行経営にも携わり、その後は地域の経済発展や社会貢献に尽力しました。
建築の歴史
本住宅は、その歴史の中で度々増改築がなされています。現在の主屋は、前身の建物が天明3年(1783)に建てられ、明治31年(1898)に大改修を経た姿です。
また、明和7年(1770)に建てられ、明治42年(1909)から2年間を費やして改修を行った仏間や、本山から招いた高僧などの来客用の蔵座敷として明治42年(1909)に建てられた前蔵は、高度な意匠や建築技術、ふんだんに用いられた漆・金箔・銘木が、信仰心の高さを物語っています。
この他にも、米蔵であった北蔵、大工小屋、長屋門、裏門などの建造物や、籾堂、下便所、堆肥小屋、内塀、石組の洗場や煉瓦積の穴蔵などが、良好に残っています。
評価
これらの価値が文化財として認められ、昭和55年に山形県指定有形文化財、令和元年には国指定重要文化財となりました。
さらに、平成30年には日本遺産「山寺が支えた紅花文化」の構成文化財の一つとして、平成31年には日本農業遺産「歴史と文化がつなぐ山形の最上紅花~日本で唯一、世界でも稀有な紅花生産・染色用加工システム~」の認定団体・認定地域の一つにもなりました。
最上川舟運・北前船により九左衛門に伝わった「雛飾り」は毎年3月にひなまつりとして公開し、雪解けとともに春の訪れを告げます。
平成25年に137年振りに栽培を復活した紅花畑は7月上旬に見ごろとなり、「紅花まつり」では里山の緑と屋敷地の黒い板塀を背景に色鮮やかな紅花が咲き誇ります。
庭園には様々な樹木と花が植栽されており、特に11月上旬~中旬に鮮烈な色彩を見せる紅葉は必見です。